************************************ 熱膨張の観測 ************************************  純鉄と炭素鋼の熱膨張試験を行い、熱膨張曲線からフェライト(α)→オーステナイト(γ)変態点やオーステナイト(γ)→パーライト(α+Fe\ :sub:`3`\ C)変態点(共析変態点)と熱膨張係数(線膨張係数)を求める。また、材料の熱膨張現象が考慮・応用されている実用材料について調査する。 - オーステナイト(γFe):Feの高温相のひとつ。面心立方構造を有する。 - フェライト(αFe):Feの低温相。体心立方構造を有する。 - パーライト:αFeとFe\ :sub:`3`\ Cから成る層状の共析組織。 - ベイナイト:γFe領域から所定の温度まで急冷した後、等温的に変態した際に見られる羽毛状または針状の組織。 - マルテンサイト:γFe領域から十分な冷却速度で焼き入れたときに無拡散格子変態によって形成される変態組織。 原理 ************************************  熱膨張とは物体の長さや体積が温度の上昇にともなって増加する現象である。熱膨張係数とは圧力一定のもとで物体が熱膨張するとき、その比率の温度変化に対する割合を示す量のことであり、一般に温度と圧力によって変化する。 以下に熱膨張試験による熱膨張係数(線膨張係数)の算出法を示す。 .. figure:: fig/図1.png :scale: 20% 熱膨張係数(線膨張係数)の算出 図1のように温度\ *T*\ :sub:`0`\ のときの長さを\ *l*\ :sub:`0`\ 、温度\ *T*\ のときの長さを\ *l*\ とすると、温度の変化量\ :math:`\mathrm{\Delta}T`\ は :math:`\mathrm{\Delta}T = {T - T}_{0}` (1) 長さの変化量\ :math:`\mathrm{\Delta}l`\ は :math:`\mathrm{\Delta}l = l - l_{0}` (2) で表される。このとき :math:`\frac{\mathrm{\Delta}l}{l_{0}} = \alpha\mathrm{\Delta}T` (3) を満たす定数 *α*\ を熱膨張係数(線膨張係数)と定義する。(3)式と(2)式より次式が得られ、図2に示す熱膨張曲線の傾きから熱膨張係数 *α*\ を求めることができる。 :math:`\frac{l}{l_{0}} = \alpha\mathrm{\Delta}T + 1` (4) .. figure:: fig/図2.png :scale: 20% 熱膨張曲線の例 実験方法 ************************************ ◎試料:純鉄棒、炭素鋼  寸法:φ8mm×50mm .. figure:: fig/図3.png :scale: 20% 試料形状(単位mm) ◎手順 (1)図4に示す測定装置の内側石英管(C)から出ている熱電対を、試料の温度測定用孔に差し込む。    ※熱電対は試料中に約15mm挿入する。 (2)(1)でセットした状態で、試料が外側石英管(D)の先端に触るまで内側石英管(C)を注意深く押し込む。    ※石英管を斜めにすると、試料が外側石英管の奥に滑り落ちて石英管を破損させたり、熱電対が試料から外れたりするので、管を水平に保ちながら作業を行う。 .. figure:: fig/図4.png :scale: 20% 熱膨張試験測定装置の外観 (3)電気炉(E)の中心に試料が位置するように、外側石英管を移動し、固定する。 (4)ダイヤルゲージ(A)の先端を検出端(B)に軽くあて、針の目盛りを0にセットし、固定する。 【(1)~(4)は教員・TAが担当】 (5)加熱を開始する。加熱は炉に付属のデジタル温度コントローラーを用いて行う。 (6)550℃から測定を開始する。測定手順は以下の通りである。(①~③) ① 加熱速度は約10℃/minとし、5℃ごとにダイヤルゲージの読み(膨張量に相当)を記録する。 ② 最高加熱温度は950℃までとし、ただちに冷却に移り、測定を続ける。 ③ 測定は550℃までとする。 ※加熱中は電気炉近傍の温度が高くなり、また石英管は破損しやすいため、十分に注意すること。したがって、実験中は装置を載せている台に触れないこと。 データ解析 ************************************ (1)実験で得られた純鉄と炭素鋼の熱膨張データより、熱膨張曲線を作成しなさい。 - 縦軸:膨張率/\ :math:`\frac{l}{l_{0}}`    - 横軸:温度変化量/\ :math:`\mathrm{\Delta}T`\ (℃) (2)各熱膨張曲線より、αFe(bcc)とγFe(fcc)の熱膨張係数をそれぞれ求めなさい。加熱時での550℃~Ac\ :sub:`3`\ (変態開始温度)間(bcc)ならびに冷却時での950℃~Ar\ :sub:`3`\ (変態開始温度)間(fcc)で熱膨張曲線の直線性の良い100℃程度の温度範囲で算出しなさい。αFeについては、その熱膨張係数を文献\ :sup:`(1)`\ の値と必ず比較すること。 .. プレレポート ************************************  実験を開始する前までに、テキストをよく読んで下記の事項をプレレポートとして作成すること。プレレポートに検印を受けてから実験を開始すること。 #. 実験目的 #. 熱膨張試験による熱膨張係数の求め方 #. 実験方法 課題 ************************************ (1)純鉄と炭素鋼の加熱時と冷却時の変態開始温度および変態終了温度をそれぞれ求めなさい。 (2)炭素鋼の昇温時の変態開始温度および終了温度と次ページに示す平衡状態図より、おおよその炭素含有量を求めなさい。ただし、炭素含有量は0.02wt%以上、0.8wt%以下とする。 (3)本実験で解析した純鉄と炭素鋼において、950℃からゆっくり冷却される際の組織変化をフェライト(α)・パーライト(α+Fe\ :sub:`3`\ C)・オーステナイト(γ)を用いて、それぞれ説明しなさい。(文章で説明しても図で説明してもよい。) (4)材料の熱膨張現象が利用されている実用材料について説明しなさい。 .. figure:: fig/図5.jpg :scale: 40% .. figure:: fig/図6.jpg :scale: 15% Fe-C系状態図\ :sup:`(2)` 【参考文献】 (1)『理科年表』、『岩波理化学辞典』、『化学便覧』、『金属データブック』、『鉄鋼便覧』など (2) Thaddeus B. Massalski, "Binary Alloy Phase Diagrams", American Society for Metals (1986)など