7. 多元系断面図の計算

 基本的な操作は二元系状態図や前章の多元系等温状態図と同じです。 異なるのは POLY_3 モジュールにおける SET_CONDITION と SET_AXIS_VARIABLE コマンドでの設定です。 例として Fe-Cr-Ni 三元系を考えると,SET_CONDITION コマンドでは N,P,T の他に計算させたい断面を定義する条件を定めます。

 例えば Cr/Fe の比が 1/5 で Ni の頂点を通る断面の条件は:

POLY_3:  S-C  X(CR)-0.2*X(FE)=0

となります。

 この例のように SET_CONDITION における "State variable expression: " (条件式の左辺) には単一の変数だけでなく,変数の一次結合としての式も指定できます。 このような条件式は直交座標系での一次関数を考えれば簡単に導かれるでしょう。 残りの変数は X(Ni) となます。 このとき SET_AXIS_VARIABLE で定義する計算軸は "T" と "X(Ni)" です。

 別の例として "X(Fe)=0.2" で Fe 濃度が一定の断面を考えると,SET_CONDITION コマンドでは N,P,T,X(Fe) の他に X(Ni) あるいは X(Cr) を設定し,SET_AXIS_VARIABLE コマンドで定義するのは "T" と "X(Ni)" あるいは "X(Cr)" となります。

 注意すべき点は," 5*X(CR)-X(FE)=0 " のように条件として単純な成分の濃度ではなく,それら「濃度の一次結合」や「活量」を用いた場合には Global Minimization 機能が用いられないことです。 このとき COMPUTE_EQUILIBRIUM を実行すると:

POLY_3:  C-E
 Normal POLY minimization, not global
 Testing POLY result by global minimization procedure
 Calculated 980 grid points in 0 s
     24 ITS,   CPU TIME USED   0 SECONDS

と Global Minimization で計算していない旨のメッセージ「Normal POLY minimization, not global」が表示されます。このようにGlobal Minimization を用いていないあるいはGlobal Minimization 機能がない旧バージョンの場合には,最後に表示される計算の繰り返し回数 (この例では 24 回) が 10 回台以下になるまで「少なくとも」二度は COMPUTE_EQUILIBRIUM を実行するようにします。 このような場合の計算手法については 3.2.2 節「Global Minimization を用いない場合」も参照してください 。